佐渡芸能伝承機構

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鈴木先生からのメール

「鬼太鼓の伝播を探る」に来場いただいた
相模女子大学の鈴木涼太郎先生からメールをいただきました。
鈴木先生は観光学がご専門で
大学院の修士論文で佐渡の鬼太鼓に関係ある論文を書かれていらっしゃいます。
当NPO理事長とはその頃より親しくさせていただいており、
また、一昨年から「たかち芸能祭」に相模女子大学の学生と一緒に参加いただいております。

今まで5回シリーズで開催してきた「鬼太鼓の伝播を探る」ですが
とてもわかりやすく流れを解説していただいたメールです。
原文のまま紹介させていただきます。


「伝播を探る」の最終回に参加することができたのは、本当に幸運でした。
直に見ることができて、あらためてこの催しの意義を実感しました。
「芸能の島佐渡」と古くからよく観光パンフレットには謳われていますが、
単なるキャッチコピーのレベルを超えて、伝承者自身がそれを実感する場が、
「伝播を探る」だったと思います。
これは、意外と各地区の伝承者自身気づいていなかったのでは、
あるいは頭でわかっていても、体感できていなかったのではないかと思います。
伝承者の方々はもちろん、鼓童のみなさん、そして松田さんご夫婦、
佐渡の地において張り巡らされた芸能でつながるネットワークを土台として、
会場には、静かで穏やかながらも、熱気のようなものが流れているような気がしました。
まさに佐渡芸能伝承機構という地に足ついたNPOの面目躍如の活動ではないでしょうか。

ところで、当日も立ち話で述べさせていただいたことですが、
こちらに戻って改めて整理して気づいたことをいくつか書かせてください。
失礼な?ところもあるかもしれませんがお許しください。
今回参加して、5型の鬼太鼓の話を
初めて実演とともに聞くことができました。
(もちろん非公式?な場では何度も聞いている訳ですが)
「北米太鼓会議のための便宜的な分類」というのが
その端緒だとは思いますが、しかしこの分類は
「鬼太鼓の伝播を探る」ためにも非常に意義のあるもの、
示唆を与えてくれるものではないでしょうか。

まず、「花笠」を含めたことで「国仲系」の成立過程が明瞭に示されたこと。
次に、「一足」を取り入れたことで、「相川系」の伝播過程と「前浜」との関連が整理されたこと。
それによって、
前浜、小木から真野湾岸を経て海府に至る相川起源の系統の鬼と
牛尾神社から国中平野、両津湾岸へと広がった「潟上」が異なる系統のものであること、
が説得力を持って示されたというのは意義深いと思います。

当然、各地区の鬼は伝播の過程でさまざまなバリエーションを伴っており、
また絶えざる外からの流入要素がそれに拍車をかけています。
そのため完全な形での分類というのは困難なのですが、
とはいえ、2系統5型で鬼太鼓の伝播を説明するのは、
現時点では非常に説得力のあるものではないでしょうか。

加えて、「豆まき」がなぜ相川近郊に集中し、
周辺地域では抜け落ちているのか、ということも分布図を見て興味深く思います。
ある特定の地域以遠への伝播の過程で抜け落ちてしまったのか、
あるいは新たな流行として流布されたのか、
現実的には前者のほうが可能性は高いと思いますが、興味深いと思います。

ところで、前提として、異なる性質の芸能が
「鬼太鼓」の名のもとでひとくくりにされてきたことは、
これまでの研究でも指摘されてきたことです。
個人的にはその過程において、
近代という時代と観光が深くかかわっているような気がしています。

思いつきで書き始めたら意外に長くなってしまいました。
まとまらぬ文章で申し訳ございません。
最後に一つだけ。

今回帰京し、久しぶりに本間雅彦先生の論文や当時お話しされていた
内容のメモ、テープ起こしをしたノートなどを眺めてみました。
先生は当時、自分が見ていないものや現在の鬼太鼓については、
慎重に言葉を選んでいた気がします。
起源に関することなどもわからない部分は、
率直に「わからない」ともおっしゃっていました。
一方で郷土史家のみならず民俗/民族学者でもあるわけで、
文書史料だけでなく「聞いたこと」をもとにした推論は多くされていました。
民俗学・文化人類学は、文字化された資料には必ずしも記録されていない
民衆の活動や歴史を現在から推論する研究領域ですから。
「史料にないからわからない」ではないと思います。

振り返って、現在の松田さんの活動。
歩いてみて聞くという意味では、まさに民俗学などとやっていることは同じです。
2系統5型の鬼太鼓という類型は、
これまでの佐渡における芸能研究の先達による蓄積を土台として
それを「祭りを歩く」ことによって発展させた一つの研究成果だと思います。
これは「批判」ではなく「発展」「進展」と考えるべきです。
(当然今後塗り替えられることも期待しつつ)
先達の考えを踏まえつつも、しっかりとした論拠を持って
別の考えを提示されることは、失礼なことではないと思います。
なので、どこかでまとめられてもよいのかな、と思う次第です(笑)

鈴木涼太郎

身にあまるお言葉をいただいてしまいました。
鈴木先生ありがとうございました。

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